九州教育学会会長 木村 政伸
このたび思いがけず会長を仰せつかることになりました。院生時代からお世話になっている学
会に最後にこうした形で多少とも恩返しができるならば、望外の喜びです。
また、これまで学会の発展にご尽力いただいた上薗恒太郎前会長をはじめ事務局のスタッフに
は、心より感謝申し上げます。これから2年間、会員の皆様に支えられながら会長の職務を全う
できればと思っております。
私自身の本学会との関わりは、先述したように院生時代からです。事務局員もその昔務めたこ
ともあり、当時と現在の事務作業の違いだけでも隔世の感があります。なにしろ、封書の住所も
すべて手書き、書類もワープロがやっと出だした時期です。その後、就職した後は、教職がらみ
の研究会や入試の時期とのからみもあり、ほぼ幽霊会員でした。さらに3年前まで新潟におりま
したので、いよいよ九州教育学会から縁遠くなっておりました。3年前に九州へ戻り、浦島太郎
のような気持ちで本学会に参加したのを覚えております。
改めて本学会の活動と学会を取り巻く状況を見ますと、さまざまなことが課題となっているこ
と感じます。
一つは、教育学研究を取り巻く状況の厳しさです。大学の数そのものはこの数十年で目覚まし
く増加し、それにつれて教員数も増加しましたが、研究という点では逆に厳しくなった側面も見
逃せません。特に私の専門とする教育史のような基礎研究は、その感を強くします。政策や社会
がすぐに役立つものを求めて、じっくりと基本から物事を考えることに価値を置かなくなった昨
今、基礎研究を取り巻く環境は厳しさを増しています。しかし、ノーベル賞が話題になる時に必
ずいわれるように、基礎研究を軽視して研究全体の発展はないと考えます。
もう一つは、昨今の大学院の変化への対応です。国立の教員養成系の大学・学部にあった教育
学研究科が改組されている現状の中では、教育学研究の基盤の確保と質の維持・向上が課題とな
っていると考えます。前任の上薗会長の新たな取り組みもその延長にあったのだと認識していま
す。九州教育学会が、こうした現状を踏まえてどのようなことができるか、またやらなければな
らないか、会員の皆さんといっしょに考えていきたいと思います。
思いがけず務めることになりましたが、務める以上は精一杯務めさせていただく所存です。ど
うぞ、これからの2年間よろしくお願いする次第です。